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仕事全般/マネージメントで考えたこと

そこにスペシャリストの必要性はあるか

多様な人材が必要とされる中でも、スペシャリストを特に確保したいと位置付ける企業も多いのではないでしょうか?

ここで言うスペシャリストはエンジニアに対するもので、局所的な高い技術的課題解決力のある人と自分の中で定義しています。

この定義は以前に、エンジニアを理解するためのパタンの1つとして表現しました。

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数多の企業が確保したい人材であることは、事業を作る過程に何らかの必要性が存在することを示唆していると考えられます。

その一方で必要性を提示し続けれずに、ミスマッチとなる体験を聞くことも少なからずあるのが実情です。

この実情は、ひとえに期待値のすり合わせ不足が要因にあるのでは?と感じるようになりました。

そこで今回は、スペシャリストへの期待値考察を通して、どんな必要性が存在するのか?何をすり合わせたほうが良いのか?をイメージできるように、自分の考えを整理したいと思います。

スペシャリストがもたらすもの

単に高品質の仕事をこなす人材であることが、スペシャリストの魅力ではありません。

事業に影響を与える範囲が大きいことこそが、魅力の本質ではないかと捉えています。

表層的な期待値と深層的な期待値という2つの観点で、その魅力と必要性の度合いを主観で探ってみます。

表層的な期待値

経験値に対する期待値とも言い換えられます。

スポットで在籍する場合と、フルで在籍する場合での違いを考えながら整理します。

スポットで在籍する場合

技術顧問や業務委託、外注等といったものも含んでいるものとします。

以下のような期待値を持ちます。

  • 技術的課題を深くイメージできる立場からの意見により、いつ事業に技術的投資するかの判断基準の幅が広がる
  • 対外的な評価を得ている方も多く、広報面の魅力が増える
  • 共に働く環境があることで、メンバーのロールモデルや成長への内発的動機付けに繋がる

フルで在籍する場合

スポットで在籍する場合の内容に加えて、深く内部にいてもらえることで、以下のような期待値を持ちます。

  • 高い実行力を定常的に確保できることで、事業推進力が高まる
  • 実現性の高い技術選択肢が増えることで、事業戦略の幅が広がる

読み解けること

表層的な期待値からわかることは、スペシャリストの実行力が定常的に欲しいかで、フルである必要性が変わることです。

優秀な人材ほど流動性が高くなってきている傾向がある中で、本当にフルで在籍してもらうほどに求めているか?何をしてほしくて求めているか?

雇用形態や拘束時間への必要性を分解して採用を考えること、ミスマッチを減らすために大事にしたいです。

立ち上げて間もない企業にとって、スペシャリストにフルで在籍したいと思ってもらえる条件を提示しきれない場合。

たとえスポットでの在籍であっても、企業との関係性を持ってくれるスペシャリストが増えてくれることに意味がある。と判断できるケースもあるだろうと思います。

深層的な期待値

「高品質の仕事」という曖昧な表現に隠れた、事業フェーズや人数規模等の状況で変化する、実務に対する期待値とも言い換えられます。

事業フェーズ毎の違いを考えながら整理します。

立ち上げ時期

とにかく色々なものが足りていなく、試行錯誤をしながらプロダクトの方向性を確かめていく時期と捉えます。

何かを解決すればそれで確度が高まるという課題が見つかっていなければ、投資判断を引き出しきれずに、短期視点での泥臭い仕事も多いフェーズでしょう。

プロダクトの課題解決となるかどうかで、優先度も頻繁に変わることが予想できます。

この時期では、以下のような期待値を持ちます。

  • プロダクトの価値検証の速度と精度を高めるため、メンバーが試行錯誤に没頭できる運用基盤を技術で実現してくこと
  • 未来に実現しにくくなりがちな事柄の検討、短期的によしとして長期的に払う技術的代償の認識合わせを先導していくこと

調整時期

プロダクトの価値の方向性をある程度見出せており、拡大時期を見据えての一定の投資判断を引き出せるようになる時期と捉えます。

大きめの次期開発を進めつつ、日々の調整や販促サポート、技術的負債を返すことも検討事項に上がってくるため、関わる人が増え出すフェーズでしょう。

この時期では、以下のような期待値を持ちます。

  • 拡大期にスピード感を落とさないため、メンバー増加に耐えうる開発基盤作り
  • 一定規模の運用を支えるため、可用性を担保しながらの技術的課題解決を先導していくこと

拡大時期

プロダクトの価値が一定規模で認められ、積極的に投資をして事業規模をスケールさせる次期と捉えます。

スケールによる負荷対策や品質を保ち続けていくため、アーキテクチャ刷新や大規模リファクタリングといった、難易度が比較的高めの技術的課題が検討事項に上がるフェーズでしょう。

関わる人も数倍になっていくことが予想できます。

この時期では、以下のような期待値を持ちます。

  • 顕在化した大きめの技術的課題を、率先して解決していく技術力と実行力
  • メンバー育成や運用体制の効率化

成熟時期

プロダクトの成長スピードが鈍化し、投資回収等、ある程度堅実な運用をしていく次期と捉えます。

拡大期に比べると顕在化する技術的課題が少なくなってきて、プロダクトのさらなる価値を求めてR&Dの動きが出てこない場合には、再度泥臭い仕事も増えてくるフェーズでしょう。

この時期では、以下のような期待値を持ちます。

  • 利益率増加のために、コストカットを技術で実現する
  • 未知の事業課題を、技術で明らかにしていくこと

読み解けること

深層的な期待値からわかることは、スペシャリストの特性と事業フェーズ毎の期待値が、どれだけ合致しているかで必要性が変わることです。

持ち合わせる特性や好む責任の範囲が人によって違う中で、今実務的に求めたいことを実行できるか?得意としているか?

事業フェーズ毎の必要性を分解して採用を考えること、ミスマッチを減らすために大事にしたいです。

立ち上げ時期を好むスペシャリストにとって、調整時期や成熟時期で活躍を求めた場合。

たとえ技術的な専門性の範囲から採用要件に合致していても、今はお互いにとって良い関係を築けない。と判断できるケースもあるだろうと思います。

何をすり合わせるのか

企業にむけて

スペシャリストに対する期待値に、どれだけの条件(金額面や裁量面)を提示できるか?

これが利害関係一致の土台部分であるため、雇用における基本だと思います。

その上で、他に考えていきたいことも見えてきました。

  • 雇用形態や拘束時間への必要性を分解して考えること
  • 事業フェーズ毎の必要性を分解して考えること

分解していくことで期待値が過大になるのを抑制し、求めることに対しての条件提示を細かく考えられる。

このすり合わせができることで交渉の幅が広がり、よりよい関係に繋がると考えます。

スペシャリストにむけて

金額面や裁量面は最ものこと、付加価値のやりがい(スペシャリストの成長に意味のある技術的課題が存在する等)になり得そうな環境を提示できるのか?

これが利害関係の強い結びつきに繋がるのではないかと考えます。

とはいえ投資できないフェーズでは、期待値はあるものの望むような条件を提示できないケースも理解はできます。

なにが提示できないのか、どういう提示ならばできる可能性があると考えているのか。

このすり合わせを細かくすることで、企業と個人間での公平感に持てれば、よりよい関係に繋がると考えます。

まとめ

スペシャリストの魅力や思考性、企業の投資判断や事業状況を検討事項として、どんな関係性を作れるのか?

何らかの要因があって、結果として合致しそうな条件や環境を提示できないのだとしたら、そこにはスペシャリストへの期待値はあっても、必要性は存在しないということなのでしょう。

今は絶賛立ち上げ時期であり、泥臭い仕事はそれなりにある。実際に技術的課題解決として任せたいのはこの部分。裁量面ではある程度好きにやってもらえるように環境を用意したい。今提示できる条件はこれくらいです、事業が拡大期になったのであれば、特定の技術的課題を任せることと、そのフェーズとしての必要性を考慮した条件の再提示を約束する。といったようなすり合わせをする意味をイメージできました。

お互いの期待値と不足点を整理し、正直に話した上で落とし所を見つけるフロー、大事にしていきたいですね。

おしまい。