チームの文化とは何なのか?
チームの文化は何を与えてくれるのでしょう。
ある文化のなかで働くということは、価値観や慣習を共有しながら働くことであり、チームにおける暗黙知を与えてくれる。 共通の暗黙知をメンバーがお互いに持っていることで、コミュニケーションの基礎となりチームの意思決定を早める。
つまりはチームを円滑に機能させるための必要条件(十分条件ではない)なのではないかと思っています。
- そもそも文化とはどんな概念なのか?
- 意識的にチームの文化を作るとはどういうことなのか?
- なぜチームの文化を良いものにする必要があるのか?
という3つでチームの文化を考えてみたいと思います。
そもそも文化とは?
文化(ぶんか、英語: culture、ラテン語: cultura)にはいくつかの定義が存在するが、総じていうと人間が社会の成員として獲得する振る舞いの複合された総体のことである。社会組織(年齢別グループ、地域社会、血縁組織などを含む)ごとに固有の文化があるとされ、組織の成員になるということは、その文化を身につける(身体化)ということでもある。人は同時に複数の組織に所属することが可能であり、異なる組織に共通する文化が存在することもある。もっとも文化は、次の意味で使われることも多い。
* ハイカルチャーのように洗練されたもの
* 象徴的な思考や学習による信念やふるまいのパターン
* ある社会組織に共有されている価値観
なにやらすっと入ってきにくい言葉が並べられていて、うっ…となるので自分の言葉に噛み砕いていきます。
チームを通して人と人が関わることで抱く想いや価値観、言葉や行動の積み重なりがそのチームにおける文化と呼ばれるようになる。
こう解釈すると悪しき文化も良き文化も、自分達で積み重ねた結果でしかありません。これは自分達の歴史とも言い表わせるのではないでしょうか。
過去の文化はある時点まで積み重ねた行動の結果
今の文化は現時点まで積み重ねた行動の結果
未来の文化はこれから積み重ねていく行動の結果
チームの文化というのは時間軸上のある断片のようなものとも捉えられます。 その断片は、チームが置かれた状況・チームを構成するメンバー・チームの積み重ねてきた歴史によって形作られる。
流動的な性質をもった概念であり、その時々の条件を受け止めて継続的なフィードバックをすべきものだと理解しました。
文化の輪郭が少しつかめた気がします。
この考え方をもとに、意識的にチームの文化を作るとはどういうことなのか?を考えていきたいと思います。
意識的にチームの文化を作る
組織的な取り組みの構造を理解する
チームの文化を作る上で、どのような組織的な取り組みが良い効果をあげているのかは、著名な方々や企業が数多くの事例を示してくれています。
数多ある取り組みのなかの1つに共感し、所属チームでも同じように取り組んで良い文化を作っていこう!と考えた時に、果たして同じような効果は得られるものでしょうか?
ここでチームの文化が、もう一度どんなものであったかを思い返します。
チームが置かれた状況・チームを構成するメンバー・チームの積み重ねてきた歴史によって形作られる。
これはつまり、チーム毎の構成要素には様々な違いがあることに他なりません。
違いがあることを前提に持つと、自分達が同じような効果を得るには、取り組みの構造を捉えることが大事になってきます。
その取り組みは、何をチームに与えるのだろうか?なぜ良い方向に働くのだろうか?結果として自分達の望むチームの文化形成に寄与するだろうか?
構造を理解することで、今のチームに与えるべきものだろうか?チームに落とし込む際に大事な観点はなんだろうか?という問いが明確になるからです。
「チームのあるべき姿を言葉にすること」という例を取り上げながら、組織的な取り組みの構造を考えることをやってみたいと思います。
チームのあるべき姿を言葉にすること
チームのあるべき姿・価値観を表すための取り組みとして、ミッション・ビジョン・バリューを設定しよう!というのをよく目や耳にします。
なぜこのような取り組みをするのでしょうか?
過去に一度考えたことのあるテーマで、その時の所感としては
日々の業務レベルにおいて判断基準の1つになり得るものである。
エンジニアが経営理念について考えた話 - nozayasu
というものでした。
チームのあるべき姿を設定することで、メンバーに行動の判断基準を与える
メンバーに行動の判断基準を与えることで、メンバーやメンバー間に健全なフィードバックを促す
一定の基準に基づいたフィードバックの積み重なりが、結果としてチームの文化を望むものへと緩やかに調整する
というような構造を自分のなかで解釈できました。
共通の理想像は、チームの継続的なフィードバックにおける指針となり、日々の積み重ねの方向を無意識下に調整してくれるのでしょう。
実際にチームのあるべき姿を言葉にする際には、チームにおける行動の判断基準になりえているか?フィードバックを生んでいるか?を観点として持つことができました。
ルールや慣習に向き合う
組織的な取り組みの構造を解釈し、チームに落とし込むために必要な観点を持つことをしてきました。
どんなに良い取り組みも、定着することなく中途半端で終わってしまってはチームの文化形成には繋がらないでしょう。次は定着させるために何ができるのか?ということを考えていきます。
イメージを湧かせるために「ユーザーファーストに徹すること」を例にしてみましょう。
ユーザーファーストを組織的な取り組みとして実現するために、職種の垣根を超えてユーザの声を日々の行動や施策に活かすことを推奨する。
この時、チームでは何が起きるでしょうか?
エンジニアが営業同行して直接ユーザーの声を聞きにいく、営業がSQLを駆使してユーザーの行動ログを分析する。ユーザの声をより深く知るために、職種や職能の垣根も超えてどんな向き合い方ができるのか?をメンバーは模索するかもしれません。
しかしこれはあくまで、メンバーの意欲に依存する形です。定着を目指す場合には、ある程度のルール化を検討する必要があると考えています。
ルールにするということ
具体的なルールとは「月一回エンジニアは営業同行をすること」といったものです。強制力を持つルールは、メンバーを行動させることに直結するため、取り組みを定着させることに強い影響力を持つと思います。
行動を起こさせるではなく、行動をさせるという言葉を使いました。ルールというものは個人が納得感を持っているかは関係なく、行動という結果を引き出すような力も持ち合わせるため、それが苦痛であると受け取られた場合強い反感を買うことでしょう。
メリットとデメリットを考えた上で、どのような場合にルールにすべきなのでしょうか?自分のなかの基準を考えておこうと思います。
- チームの理想とする価値観を共有するため、それが望ましい強制である場合
- 立場・職種・職能を超えたフィードバックや指摘をしやすくなるよう、メンバーに公平性を与えたい場合
1について
たとえルールの設定者側が望ましいと思っても、最悪の場合それを理由に辞められるかもしれない。ということはあり得るだろうと思っています。
なので、なぜそのルールが望ましいと思っているのか?をチームやメンバーに繰り返し言葉にすることを、合わせて行うべきと考えています。
2について
チームに取り組みを定着させるためには、メンバー間での監視が機能することが必要です。人間は忘れる生き物であり、ミスをする生き物だと捉えています。だからこそ、フィードバックを日常的に行えることが定着に強い意味を持ちます。
しかしフィードバックというのは、職種や立場を超えて行うことに心理的障壁が伴うものであるというのが一般的です。 そこでルールです。ルールという共通の基準を逸脱したか?で判断できる状態を与えることは、フィードバックをするという行為の心理的障壁を和らげるだろうと考えています。
慣習の扱いを決めるということ
チームにはルールのように明言されていないが、メンバーが同じようにとる行動である慣習と呼ばれるものが存在します。
ある行動を他者が真似する形で生まれたもの、メンバー特性によって生まれたもの、ルールの副作用で生まれたものといったような自然発生するものです。
慣習は自然発生したものであるがゆえに、チームの文化にとって望ましいものであるとは限りません。扱いとして、認める・認めない・黙認するという3つの選択肢が考えられます。
価値観にマッチしているか?メンバーの自由度を妨げないか?何か問題が起きているか?という観点で、いかに扱うべきかを判断する必要があると考えます。
特に黙認する選択肢をいれることが大事だと思っていて、慣習を認める・認めないと明言することはルールを作ることと同義であり、メンバーに前述したようなストレスをもたらす可能性のある行為です。直近問題がないのであれば、あえて黙認することにも意味があると感じています。
なぜチームの文化を良いものにするのか?
チームの文化というものは、良くしたことで事業の利益に直接影響するものではないかもしれません。
また事業がうまくいってるときには、得てしてチームの雰囲気も自然といいものです。 逆に言えば、事業が苦難と対峙したときほどチームの雰囲気が悪くなります。
ここで考えなければいけないことは、チームの雰囲気が良いこととチームの文化が良いことは別であるということ。チームの雰囲気が良くても組織的負債は貯まっていく可能性があるということ。
なぜチームの文化を良くするのかと言われれば、それは事業を継続させより発展させたいから。
事業が苦難と対峙した時にどう切り抜けるか、チームが苦難にきちんと対峙できるようにしておく必要がある。
そのために普段からチームの文化のことを考えていなければいけない。組織的負債を溜め込み過ぎないようにしなければならない。
たとえ事業がうまくいかず雰囲気が悪くとも、それでも必死にチームとして事業に向き合っていれてるのであれば、そこには良いチームの文化があるのだと。そんな風に僕は思うのです。